医師会ニュース

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2023年10月01日

***医師会だよりNo.30***

もっと知って欲しい膵臓がんのこと
(早期診断はとても大切です)

皆様は『膵臓(すいぞう)』をご存じですか。私の外来を訪れる患者様やご家族の多くは、『よくわからない』と言われます。膵臓は胃の裏側にあり、幅3cm、長さ12cm位の小さな臓器です。“膵液”を出して腸内で食餌を消化すると共に、“インスリン”などのホルモンで血糖を調節するなど、重要な働きがあります。一方、膵臓がんは従来から非常に治療成績が悪く、“5年生存率が最も悪いがん”とされています。現在日本国内では、膵臓がんの年間死亡者数が約40000人と年々増加しており、死因の第4位とされ、治療成績の改善には早期診断の重要性が提唱されています。
私がJA尾道総合病院に着任した1997年ころは、膵臓がんに対する有効な診断・治療法が少なく、膵臓専門医として非常に悔しい思いの連続でした。そんな中、2006年に日本膵臓学会から『膵癌診療ガイドライン』が発刊され、初めて膵臓がんの危険因子が提唱されたのを機に、尾道市医師会のご理解のもと“膵臓がん早期診断プロジェクト(尾道方式)”が2007年からスタートしました。『喫煙』、『大量飲酒』、『糖尿病』、『肥満』、『膵臓がんの家族歴』などを複数以上持つ患者様に、診療所などで血液検査や腹部超音波(エコー)などを行い、異常があれば中核病院に積極的にご紹介頂く取り組みです。開始後15年が経過した現在、早期診断例が増加し、地域の5年生存率は全国平均(8.5%)を大きく上回る約20%にまで改善しています。尾道方式はすでに国内50カ所以上で展開されており、2022年11月からは広島全県下で“尾道方式”を参考としたHi-PEACEプロジェクトも開始され、治療成績の改善が期待されています。皆様も膵臓がんに関心を寄せて頂き、何か気になることがあれば、診療所の先生方、当院のがん相談支援センタ-のスタッフなどに気軽にお尋ねください。